境川心理相談室で用いている技法の1つであるソマティック・エクスペリエンシング®︎(somatic experiencing®︎)は、ピーター・リバイン(Peter A Levine)によって開発された、とてもユニークなトラウマの治療技法です。
私がソマティック・エクスペリエンシング®︎を学びはじめたとき、その考え方やアプローチの仕方が、私のそれまでの学びや、そこから形成されたトラウマに関するイメージとは全くことなるものだったので、たいへん驚き、認識を新たにしていくことに時間を要しました。
ソマティック・エクスペリエンシング®︎は、心身がおびやかされるような体験をした際の、身体の中で生じるプロセスに着目し、アプローチしていきます。
今は安全で、安心していてよい状況の中で生活していても、そのことを頭では理解していても、今なお、おびやかされる環境の中にあるかのように、心身が反応していることがあります。
また、危機に対処するための身体の反応が、中断されたまま完了していないために、不調が生じていることもあります。
ソマティック・エクスペリエンシング®︎では、危機に対処するための身体の反応を完了させることによって、危機はすでに去り、今は安全で、安心していてよいのだと、心身ともに感じられるよう、身体にはたらきかけていきます。
このように説明されても、かつての私がそうであったように、あまりぴんとこないかもしれません。
ですが、ソマティック・エクスペリエンシング®︎がどのようなものなのかについて、あらかじめ理解している必要は全くありません。
自分の身体でくりかえし体験してみてようやく、あぁそういうことかと、納得できるようになっていく性質のものではないかと、私は感じています。
ソマティック・エクスペリエンシング®︎のセッションの中で生じる癒しのプロセスは、理解しようとしたり、分析しようとしたりしすぎると、自然な流れをそこなってしまいます。
自分にとっての新しい体験に、好奇心をもって身をゆだねてみることができるようになると、ソマティック・エクスペリエンシング®︎からの恩恵を、うけとりやすくなっていきます。